今期限りでアルビレックス新潟の監督を退任するアルベルト監督のコメントがとても良い内容でした。
新潟愛が感じられ、監督もサポーターも、お互いに尊重しあっていたことが伝わってきます。
ぜひ読んでみてください。
私はサッカーが好きな人として、以下の引用部分が面白かったので、これについて、私個人の意見を書きます。
サポーターの皆さん、アルビレックス新潟のプレースタイルを決めるのは、クラブではありません。このスタイルをサポーターの皆さんが評価し、楽しんでいただいているのであれば、今後はサポーターの皆さんこそが、クラブがこのスタイルを継続できるようにサポートしてほしいと思います。プレースタイルを決める、そして守る役割を担っているのは、サポーターの皆さんです。
サポーターのリアクションは、選手の意思決定に影響を及ぼす
ビルドアップの際に、溜息の出るスタジアムでは、選手たちはボールを保持しなくなる。
かわりに、ダイレクトなサッカーをするようになる。
ビルドアップの際に、拍手が湧くスタジアムでは、選手たちはボールを保持するようになる。
かわりに、ダイレクトなサッカーをしなくなる。
私はサポーターのリアクションは、選手の意思決定に影響を及ぼしていると考えています。
意志の強さ、弱さは個人の問題ではない
ゲームモデルを遂行することを、意志の強さと表現します。
意志の強さは、志を立てた瞬間に決まるものではありません。
弱い心からはじまり、何度も抗い続け、自分の中で信念を作り上げる繰り返しの中で強くなっていくものです。
何万人からのリアクションに抗い続けることは容易ではありません。
それは特定の個人の問題ではなく、人間という生き物の意志が弱いためです。
意志の強さを獲得するためには、心に責任を押し付けずに、新たなリーダーのもと、早い段階で成功体験を得る。
そして、内外問わずポジティブなフィードバックがされるという状況、外部足場を作る必要があります。
サポーターの誤ったフィードバック
サポーターは監督の狙いをすべて知ることはできません。
知ろうと努力し、頭の中で考えても、全くの見当違いということもあり得ます。
そのため
カウンター時のポジティブなつもりの応援が、チームのポゼッションサッカーに対しては、ネガティブなフィードバックとなっている。
ビルドアップ時のポジティブなつもりの応援が、チームのダイレクトサッカーに対しては、ネガティブなフィードバックとなっている。
・・・ということがあり得ます。
こういった事故を防ぐためには、監督からサポーターへ狙いが共有されることは必須事項でしょう。
ですが、それ以上に「サポーターが監督を知り、信じ、尊重できるかにかかってる」と私は考えます。
相手を知ること、信じること、尊重することは気持ちの問題だけではなく、技術が必要なので、誰でも簡単にできるものではありません。
- 相手を知るには、相手の立場に立ち、その人を見る必要があります。
- 相手を信じるには、相手を知り、基本的な態度や人格が信頼に値し、変化しないものだと確信する必要があります。
- 相手を尊重するには、相手を知り、信じ、自分も変わらず相手を信じ続ける技術が必要です。
残念ながら先述した通り人間という生き物は意志が弱いです。
成績や自分の好みのサッカー観で、監督を信じ続けることができず、同調する意見を探し、声の大きな人を見つけ、あっさりと拒否してしまうでしょう。
これは人間なので、仕方ないことなのです。
まとめ
以上のことから「サポーターはチームの狙いとは関係なく、プレースタイルを矯正してしまう存在」と表現したいと思います。
アルベルト監督の言う「プレースタイルを決め、守る役割」は、理にかなった信念を持ってクラブが決めてくれることを私は望みます。
これは認知の脆弱性を突き「〇〇を疑うなんて、なんと罰当たりな!」という人間のバグを利用することがシンプルだと思うからです。
その話は気が向いたら書こうと思います。
参考文献
- [「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論, 林舞輝, ソル・メディア, 2020/08/07]
- [愛するということ, エーリッヒ フロム, 紀伊國屋書店, 2020/09/10]
- [独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法, 読書猿, ダイヤモンド社, 2020/09/29]