シマオ・マテ選手の退団が発表された。
僕は物忘れがとても激しいタイプだ。サッカーに限らず1年前のことすら具体的には覚えていないので、「あの試合のシマオ選手は凄かった」とか、そういうエピソードは全くない。ただ、シマオ選手が偉大なリーダーであったことは覚えている。
加入前のイメージ
シマオ選手は、リーガ・エスパニョーラでもプレーしたボランチの選手として仙台にやってきたプレーヤーだ。
リーガ・エスパニョーラはスペインの1部リーグ。中村俊輔選手曰く「スペインのディフェンダーは日本の司令塔よりも上手」、「エスパニョールのサイドバックの方が僕よりも上手い」らしい。(本当に言っていたのかは知らない。)
僕はYouTube等で加入選手のプレーをみるタイプではないので、リーガ・エスパニョーラでプレー経験のあるシマオ選手にとても期待していた。
当時、ベガルタ仙台を率いていたのは渡邉晋監督。前シーズンは天皇杯で準優勝。今季はシマオ選手をアンカーに置いたシステムにチャレンジするのか?キケ・セティエン監督のレアル・ベティスのバルトラ選手のように、センターバックがアンカーに可変するシステムにチャレンジするのか?とワクワクしていた。
偉大なリーダー
実際にプレーをみてみると、足元は普通(なんならうまくはない)で、めちゃくちゃフィジカル強い選手だった。 ー完ー
と、オチのようになりそうだが、シマオ選手の素晴らしさはサッカーボールを蹴っているときに発揮されるのではない。タイトルの通り「偉大なリーダー」なのだ。
今でこそ多少は改善されているが、ベガルタ仙台は「背中で語る」ようなタイプのプレーヤーが多く、試合中に選手の声があまり聞こえない。加入年でいえば、味方が悪質なファウルをされたり、あきらかな誤審があった際や味方がヒートアップしていても我関せずの選手が多い。一旦ゲームが切れたときに無音タイプがはじまる。ピッチ内に「リーダーがいなかった」のだ。
シマオ選手はピッチに「リーダー」として君臨してくれた。
加入年の途中からセンターバックとして起用されると、フィジカルを活かしたボール奪取能力でピッチ内はもちろんサポーターを含めた仲間を鼓舞してくれた。
ゲームモデルから逆算された、ボール奪取後のプレー選択(クリアすべき場面ではクリアする。ボールを切る)の正確性。その後の味方へのコーチングや拍手も忘れない。
難しい場面を防いだあとのスウォヴィク選手とのやり取りは、難しい場面が続き、「もうダメだ」と心がつらくなるのか。それとも自分たちの守備を称え、そこから攻めに繋げる野心となるのか。メンタルに大きな違いがあった。
前述した審判とのコミュニケーションも何語でやってくれていたのかは分からないが、身振り手振りを含めながら率先してやってくれていた。表情をみれば本気でコミュニケーションをしてくれていたことが分かる。
2019年、ベガルタ仙台がJ1に残留できたのは、間違いなく、シマオ選手のおかげだ。感謝してもし切れない。
翌2020年はシマオ選手は大怪我。チームも「何を求められているのか」が最後まで分からない状況で、パフォーマンスが低下したものの、名誉ある「代表招集を辞退」し、チームに尽くしてくれたことは忘れない。
ピッチ外でも、選手たちのInstagramをみる限り、いつもニコニコと笑っていたナイスガイ。偉大なリーダーが次のチームで再び輝けることを祈っています。
カニマンボ!
2021年に求められていたこと
今シーズンのプレー面で、シマオ選手が「求められていたこと」も少しだけ考えます。
開幕戦から左のセンターバックとしてプレーしていたシマオ選手。
仙台は左利きのセンターバックがいないため、右センターバックと比較するとビルドアップ能力が下がる選手を左センターバックに置く傾向があります。手倉森監督は長崎時代にセンターバックとして身長は低いものの、左利きでビルドアップのできる二見選手を起用していたことから、これは望んでいる状況ではなく、単純にできる選手がいないからそうしている、と僕は予想しています。
右センターバックとして求められているビルドアップは、短く1列ずつ越えていくことよりも、ダイアゴナルなサイドチェンジ。もしくは、フィフティーフィフティーの競れる3Dパスを蹴ることと考えています。シマオ選手はフィフティーフィフティーのボールを蹴るのは得意だと思いますが、ダイアゴナルなサイドチェンジは得意ではないので、求められていたことには応えきれていなかったように感じます。
守備面で考えると、仙台は最もクオリティの高いゴールキーパーであるスウォヴィク選手からの逆算になります。スウォヴィク選手はシュートストップやハイボールの処理にとても優れている選手です。反面、守備範囲はJ1のゴールキーパーの中では狭いです。この守備範囲というのはディフェンスラインの裏のスペースをさします。
そのため、仙台のセンターバックに求められる能力として、ディフェンスラインの裏をカバーできることがあります。
シマオ選手は元々スピード豊かな選手ではありませんでしたが、ランニングコースが良質なので、怪我前はJ1のフォワードに対しても問題なくプレーできていました。しかし、怪我以降は追いつけない場面が増えていました。
本題からはズレますが、手倉森監督含めスタッフは開幕前、他J1チームのアスリート能力を甘く見積もっていた印象があります。シマオ選手がスピードで置き去りにされる点もそうですが、皆川選手で空中戦、地上戦で勝てるという目論見もです。そこからアジャストして今のチーム状況にできているのは素晴らしいものの、アスリート能力が武器と想定していたプレーヤーが再びメンバーに返り咲くのは難しいのだろうと私は考えています。
他にもチームから攻守に求められていたことは多数あると思いますが、応えきれなかったこととしては上記が思い当たりました。そして、それに応えるのも難しいだろうと思っています。求められたことを応えようとすることはできても、応えられるかは話は別です。
左足でビルドアップしろ、サイドチェンジを蹴れと言われても、ミスを許容されるチーム状況ではありません。スピードを取り戻せと言われても、取り戻したくても取り戻せない選手はたくさんいます。
僕はシマオ選手は人間性も優れていますし、応えようとしてくれていたと予想しています。右足で右サイドへ3Dパスで相手の頭上を越すようなパスが、今シーズン何回かありました。チャレンジはしてくれていました。それで個人的には十分です。
きっといつか、そういったチャレンジが実を結ぶことを祈っています。
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— Goal Japan (@GoalJP_Official) March 17, 2020
ベガルタ仙台 #シマオ・マテ の
ディフェンスを #集めてみた ☝
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リクエストいただいた『相手FWと競り合うシマオ・マテ』を中心に、仙台のディフェンスリーダーの強固な守備をまとめてどうぞ🇲🇿#集めてみたシリーズ
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