2022年に読んで面白かった本ベスト5

2022/12/30

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2022年に読んで面白かった本ベスト5を紹介します。

ベスト5ですが、どれも素晴らしかったので紹介順は関係ありません。
なお、発売日ではなく、私が2022年に読んで面白かった本なので、ご注意ください。

2021年版はコチラからどうぞ。

私とは何か 「個人」から「分人」へ 


平野啓一郎さんの『私とは何か 「個人」から「分人」へ 』。
「分人」という概念が面白いです。

「分人」は「個人」を更に細かく分ける考え方です。
たった一つの「本当の自分」など存在しない。
対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」である。

誰かといるときの自分、何かをしているときの自分は(ベースは同じかもしれないけど)違うというのは誰もが感じていることと思います。
そういった言動は「八方美人」「偽善者」などなど、悪い印象を持つ人もいるかもしれませんが、これに対してのアンサーも素晴らしい。
コミュニケーションの成功には、それ自体に喜びがあるからである。

まさにその通りだなと感じました。
自ら好んで、初めからコミュニケーションを失敗させようとした経験が私自身にはありません。
可能であれば成功させたい。
なぜかは考えていなかったけど、コミュニケーションが成功することが「喜び」だと言われ、初めて認識できました。

もちろん対人関係もそうですし、本や映画なども「合う・合わない」はあって、関係を継続できないことはあるのですが、スタートラインは「成功させようと思っている」のだと認識できたのは大きいです。
この本を読んでから素直に「あなた(たち)と上手くやりたいと思っているし、そのために努力しようと思う」と伝えられるようになりました。

嫌われる勇気


岸見一郎さん、古賀史健さんの『嫌われる勇気』。

何年か前に嫁ちゃんの従兄弟の家にお邪魔した際にサラッと読んでハマり、結局借りて読んでしまった1冊です。
ちゃんと返したので手元にはなかったのですが、まとめ買いセールで買って、久しぶりに読みました。
色々な人が「読んでおけ!」「読んでよかった!」というクチコミを書くだけあって、とても面白い本です。

対話形式で進む本なので読みやすいです。
ただ、私は常々思っているのですが、対話形式は「めちゃくちゃウザい」です。
良質な解答には良質な質問が必要だ、ということは分かるのですが、基本的に初学者側が頭が良いけど性格がとにかく悪い……というかイキってる。
こういうタイプの人間は苦手です。

肝心の中身について。
過去の原因ばかりに目を向け、原因だけで物事を説明する「決定論」からの脱却。
これまでの人生になにがあったとしても、今後の人生をどう生きるかについては何も影響がない。
これからの人生を決めるのは、「いま、ここ」に生きるあなたなのだ。
……痺れますね。カッコいい。

私自身、過去に後悔は当然ありますが「もうどうしようもないこと」と受け入れられるようになってからは、かなり楽に生きられています。
逆に「いま、これからどうする」に追われている感覚もありますが、それはそれとして、この本のアドラー心理学の考え方は、めちゃくちゃ面白いです。

表参道のセレブ犬とカンパーニャ要塞の野良犬


若林正恭さんの『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』。
何というジャンルなのかは分かりませんが、旅行記?エッセイ?みたいな本です。

印象深いのは、著者と家庭教師のやり取り。

「先生、知ることは動揺を鎮めるね!」
「若林さん、学ぶことの意味はほとんどそれです」

実際のところは、学ぶと更に疑問が生まれ、それを鎮めるためにまた学び……というループだと思いますが、その流れはとても楽しいことだと私は思っています。

社会人だと「上司が言っていること何も分からない……」ってすごく辛いです。
「上司は凄いなあ。それと比較して自分は全くダメだ……」ってシンドい。
「上司は凄いなあ。でも自分もついていけている!」という充実感が大事だと思います。
なお、「上司はクソだなあ」は最悪です。さっさと転職しましょう。

中身は著者の海外旅行記に見せかけた「社会主義」と「新自由主義」について。
また、「新自由主義」での競争で「負けている」感覚を持つ著者の胸の内が書かれています。
恥ずかしながら私はこの辺りの知識は疎いのですが、自分が住む国はどういった思想の国なのかを知るきっかけとなり、とても良かったです。

ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち


レジーさんの『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』。

生き方なのか、働き方なのかは分かりませんが、とにかく「コスパ」が意識される世の中では「教養」ですら高い即効性を求められています。
例えば「これを知っていれば年収が上がる!」とか、そういうやつ。
実際のところはそんなものはないのですが……。

この本の良いところは「コスパを求める人がダメ!」という安直な話ではなくて、「そういう時代になっている」という前提の上で、「でもこのままだとまずいよね」と話が進むところです。

(みなさんはどう思っているか分かりませんが)私は「成果を出すためには自分で努力すべき」だと思っています。
それはこの本を読む前も、読んだ後も変わりありません。
ですが、この考えが行き過ぎると「成果の出ない人は努力していないから救済されないのは当然」という立場になってしまうというのです。

私はそこまで過激派ではないです。
「成功には、必然だけではなく偶然もある」「何もかもをコントロールすることは不可能」「努力しているかどうかは可視化できない」などの問題がある中で、「救済されないのは当然」は恐ろしい発想です。
でも「なんでそんな事も知らないの?」「なんで知らないって分かったのに学んでないの?」という悪魔の囁きがあるのも事実であります。
そういった現状と、どう向き合いますか?というのが書かれていて面白いです。

ちなみに私は「ファスト教養」という概念があるのを理解した上で、「ファスト教養」は受け入れました。
人が何と言おうが成果はさっさと出したいし、その効果がありそうなものに目星がついているならさっさと導入したいです。

世界は善に満ちている:トマス・アクィナス哲学講義


山本芳久さんの『世界は善に満ちている:トマス・アクィナス哲学講義』。

ランキング形式にはしていませんが、一番読めて良かったなあと思うのはコレ。
私は本は基本的にジャケ買いなので「善って書いてるし道徳の本かなあ」程度のノリでした。
道徳的善だと読む気失う人もいると思いますが、この本でいう善は「好きなもの」「好きなこと」「好きと思う感情」とか、そのくらいフランクなものとして捉えてもらえると良いです。
「世界は好きで満ちている」だと、なんかポジティブで良い感じですね。

さて、この本がなぜ一番良かったかというと、「すべての感情の根底には"愛"がある」という考え方が素晴らしかったからです。
憎しみ、欲望、忌避、喜び、悲しみ、希望、絶望、大胆、恐れ、怒り。
これらすべての感情の根底は"愛"だというのです。
「なぜ?」というのは本を読んでください。

私はサッカーというかベガルタ仙台が好きです。
サッカーには勝ち負けがあって、勝てば良い気分になりますし、負ければ嫌な気分になります。
そういうときに、「すべての感情の根底は"愛"」と認識すると、自分自身の捉え方が変わります。

勝ったときに、
こんなにも嬉しいのは愛しているからだと思えます。
もう少しこうだったらより良かったのになあと欲張るのも愛しているからだと思えます。
うまくいけば昇格できるかもと希望を持つのも愛しているからだと思え舞う。

負けたときに、
こんなにも悲しいのは愛しているからだと思えます。
相手チームや選手に恐れや憎しみを感じるのも愛しているからだと思えます。
3点差になったり、降格したり、昇格できなかったりしたときに絶望するのも愛しているからだと思えます。

ポジティブな感情なら、そんなことをイチイチ思えなくても正直良いです。
ただ、ネガティブな感情のときに、「ああ、これは好きだからこそ、こう思ってしまうんだ」と気づけると、闇に飲まれずに済むというか、上手く切り替えようと思えるのです。

これを自分だけではなく、他の気持ち(予想ですが……)に当てはめると、「ただ嫌な感情でいっぱいの世界」から「本当はみんな好きなものの話しをしている世界」に変わります。
世界の見え方が変わる本だったので、今年一番読んで良かった本だといえます。

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